「Second Deperture」=「第二の出発」。そう名付けられたワンダーホワイト(以下、ワンホワ)のワンマンライブは、札幌では珍しいバックバンドを引き連れたステージとなった。2024年8月17日、SPiCEで行われたライブレポートをお届けする。
お盆休み真っ只中。地元へ帰省する人や、RISING SUN ROCK FESTIVALで北海道の短い夏を謳歌する人も多く、札幌のライブハウスは閑散期となるケースも少なくない。にもかかわらず、この日のSPiCEには常連のファンはもちろん、家族連れや学生など、たくさんの観客が詰めかけた。お目当てはもちろん、初のバンドセットワンマンを開催するワンホワだ。周年や生誕祭といった特別な日付のイベントではない。それでも多くの人が期待感を寄せる理由は、ライブタイトル「Second Departure」に込められた意味の”答え合わせ”だろう。
ワンホワが新体制として新たな 一歩を踏み出した2023年10月から、すでに10ヶ月が経過した。精力的なライブ活動はもちろん、オリジナル曲である『White Days』のMVはYouTube再生回数が1万回を超え、新曲の『VNILLA』もそれに続く勢いで再生回数を伸ばしている。そんな彼女たちが次の挑戦として選んだのが、バンドの生演奏をバックにステージを行うワンマンライブ。第二の出発の幕開けとしてふさわしい舞台が揃った、といえるだろう。
客電が落ち、聴こえてきたのはピアノの旋律。そのメロディーは、ライブタイトルにもなっている『Second Departure』だった。その後、ライブ定番のSEと共にスクリーンに映像が流れ出す。モノクロからはじまった映像は、次第に色を帯び、カラフルなペンキが塗られていく。そこに浮かび上がったのは真っ白な「WONDER*WHITE」のロゴ。まるで「これから私たちは色々な挑戦をするけれども、ワンホワはその白さを失わない」といった決意表明のようなOvertureだった。
スクリーンに「Second Deperture」の文字が浮かび上がった直後、4カウントの叫び声と共にドラムのハードなビートが会場に鳴り響く。客席から「これがバンドセットだ!」と言わんばかりの歓声が鳴り響き、幕がゆっくりと上がっていく。
「ワンツースリーフォー!」
メンバーのカウントと共にライブ開幕の口火を切ったのは、ファンからも人気の『SUMMER BEAT』。ギター、ベース、キーボード、ドラムが鳴らすサウンドは、ロックバンドさながらの音圧。しかし、それに負けじと客席からはファンのコールが響き、ボルテージは最高潮。
「さあもっと楽しまなくちゃ、ワンホワバンドセット終わっちまうぜ!」
ライブアレンジされたMARIKAの煽りに、客席も精一杯呼応していた。
オープニングナンバーを歌い切ったメンバーたちは、ドラムのキックが鳴り響くなか、円陣を組み「ワンダーホワイト!」と声を上げた。なるほど、『SUMMER BEAT』はライブでラストトラックに選ばれることの多い楽曲だ。それを1曲目に持ってきたのは、ある意味でワンホワ第1章のエンディングなのだろう。そしてこの円陣は、第2章をはじめるための掛け声…まさに、第二の出発だ。
そんな考察にふけっていたのも束の間、ネクストソングとしてはじまったのは『Funky Night』。軽快でキレのあるギターカッティングが心地よいダンスナンバーだ。やはり生バンドは、伝わってくる音の情報量が段違い。自然と身体が揺れてしまう。ノリノリでステージを眺めていると、楽曲のアウトロで突然、一人の男性がステージにマイクを持って登場。筋金入りのファンならすぐに気づいただろうその人は、ワンホワの音楽プロデューサーKOHだ。2曲目にしてこのサプライズ。出し惜しみなしの演出に、その後の展開への期待感が高まった。
2曲目が終わりMCタイム。ファンにとってはもちろん、ワンホワにとっても非常に大切なライブだからこそ、最初のMCでどんな言葉が飛び出すかと構えていたが、そこにいたのはいつも通り、等身大の彼女たちだった。それでも、この日をどれほど楽しみにしていたか、そして何よりファンと一緒に楽しもうという気概がまっすぐ伝わってくる時間だった。
その後は人気曲である「アナタニ愛ヲ」、「Shining Load」を2曲続けて披露。バンドの音圧と、ワンホワの情熱が混ざり合い、幸せな化学反応は続いていく。
次のMCでは「ワンホワは普段YouTubeでバラエティ的なこともやっているので、ここでもやっちゃいます!」ということで、「ほめほめフリースタイルバトル」がスタート。メンバー同志が交互に違いを褒め合い、どちらがより褒められていたかを客席の歓声で決めるというものだった。使用されるビートに『White days』のイントロがサンプリングされるなど、HIPHOP的マナーも踏襲されている。
優勝したのは、ファンから「褒め神様」と呼ばれているARISU。疑う余地もないほどの”褒めスキル”に、満場一致の勝利を重ねていった。一方、他のメンバーの”褒め”も、互いをリスペクトし、支え合っていることが伝わる。バラエティセクションではあったものの、心が温まる時間をファンと共有したといえるだろう。
企画終了後は、メンバーがそれぞれ分かれたパフォーマンスセクションがスタート。こうしたメンバーコーナーを設けられるのも、ワンマンならではだ。
まずはMEERIN、MARIKA、LIYUによる「Liberation-解放~」。ワンホワの先輩グループであるPUNKY RAD PINKのカバーだ。普段とは異なる、クールでスタイリッシュな衣装とダンス、歌声に客席も魅了される。視線の送り方から指先の伸び方まで、別のアイドルが憑依したかのような、圧巻のステージだった。
この日驚かされたのは、LIYUの豹変ぶりだ。歌唱パートでの声量やドープなラップパートで、本人の持つ美しさと狂気が入り混じる。最近になってそのビジュアルに磨きがかかった彼女だが、パフォーマンスにおいても大きな成長を感じさせてくれる瞬間だった。
二番手はARISUによるドラムソロ。学生時代にドラムを叩いていた彼女ならではのパフォーマンスだ。Hump Backの「背景、少年よ」の音源に合わせて、アイドルらしからぬパワフルなビートを聴かせてくれた。
曲の終盤、ギター、ベース、キーボードのメンバーがステージ入りし、演奏へ参加。まるで「ARISUバンド」が結成されたかのような演出だ。演奏後、満面の笑みのまま叫んだ「「ありがとうー!」は、マイクを通さずともすべてのファンの心に届いていたように思う。
三番手はKANON。曲は同じくHump Backの『番狂わせ』。ミニギターを抱えて登場した彼女の姿は、さながらバンドのギターボーカルだ。演奏前「弾いているかいないかは、みなさんの判断に任せます」と話していたが、しっかりとその音色が聴こえてくるようなパフォーマンスだった。
聞くところによれば、彼女の父は元バンドマンなのだそう。ライブ後のSHOWROOM配信で「パパに褒められたのがうれしかった」と語っていたが、それも納得のステージだった。アイドルが突然楽器を持って現れる、まさに”番狂わせ”のステージは、KANONのジャンプで終了した。
四番手はUII。「この曲を歌うことが念願だった」というその曲はReoNaの『ANIMA』。テレビアニメ『ソードアート・オンライン アリシゼーション War of Underworld』アリシゼーション・アウェイクニング編のOPテーマだ。漫画やアニメが大好きな彼女がこの曲を歌いたかった理由が、鍵盤のせり上がるような音色の中で語られる。普段は元気でファニーなキャラクターの彼女だが、この日ばかりはまっすぐな視線を客席へと向けていた。
肝心のパフォーマンスはお見事の一言。ボーカル力に定評のある彼女だが、いつにも増してその歌声が冴えわたる。まるでアーティスト「UII」のソロコンサートだ。情熱的なバンド演奏と、UIIの決意を込めたような歌い方がマッチして、頭に映像が飛び込んでくるようだった。
メンバーコーナー終了後は、Gt.奥山大地、Ba.三宮理人、Dr.ふ~みん、Key.林佳一郎というバンドメンバーの紹介が挟まり、ワンホワの定番曲『太陽と踊れ』がスタート。曲中に振り回されるタオルが最後に客席に投げつけられ、フロアは争奪戦に見舞われる。
大盛り上がりのなか、続けて演奏されたのはhitomiのカバーである『LOVE2000』。ロックなリフと軽快な8ビートは、バンドセットにぴったりだ。前曲から引き続き、ライブでのパーティーチューンが披露されたことで、会場の熱気も最高潮に達していたことだろう。
本編ラスト前のMCでは、MEERINが本ライブへの想いや、これからのワンホワについて語る。途中、美しいピアノの音色が聴こえてきたことで、観客にもライブのエンディングが近いことが伝わっていた。「きっとみんなも大好きな曲だよ」。そう言って演奏されたのは、ワンホワ最新曲の『VANILLA』だった。
曲中に散りばめられた細やかなサウンドたちを、バンドメンバーが見事に表現する。ワンホワは全力で『VANILLA』の世界観を歌とダンスで表現した。はじめからバンドメンバーも含めてワンホワだったかのような一体感。この日のために全員で頑張ってきたメンバーの「Burning Love」は、しっかり会場一人ひとりに届いていたことだろう。
もちろん「最後の曲です」で終われないのがアイドルライブ。一人のファンがアンコールの狼煙を上げ、会場がそれに続く。「アンコール!」「ワンダーホワイト!」「MEERIN!」「MARIKA!」「LIYU!」「KANON!」「UIIちゃん!」「ARISU!」と、愛情あふれるさまざまな声が上がる中、メンバーがステージに戻ってきた。
「タイトルになっているのにまだ、歌っていない曲ありますよね?」というMARIKAのMCではじまったのは『Second Depertute』。彼女たちの決意を感じ続けたこのライブ。イントロがかかった瞬間、普段やっている楽曲なのにまったく違う曲に聴こえたファンも多いだろう。その想いはメンバーも一緒だったのかもしれない。ここまで、既に感極まって涙していたメンバーもいたが、気丈に振る舞っていたMEERINが自分のパートで声を詰まらせ、歌声を震わせていたのが印象的だった。初期メンバーであることはもちろん、リーダーとしての責任も背負い続けてきた彼女だからこそ、込み上げる想いがあったのかもしれない。「何度だって始められる」という歌詞が種まきだったとすれば、ようやくここで六輪の美しい花が開いたのだろう。
曲が終わり、アウトロと同時にスクリーンが降りてくる。メンバーの「ありがとう!」と共にライブは終了。と、思いきやスクリーンには『Second Deperture』の歌詞とともに、バンド練習中であろう映像が流れだす。そして最後にはファンにとってのスペシャルサプライズが用意されていた。2025年1月26日に行われるAnniversaryワンマンライブと、1stALBUM『WHITE BEATS』のCD&配信リリースの発表だ。
スクリーンが上がり、メンバーが再登場。とくに、CDリリースについて喜びを隠し切れない様子で、涙を流すメンバーの姿も見られる。メンバー全員にとって、このライブがちゃんと”再出発”になったんだな、と感じた。
あっという間に過ぎ去った2時間弱のステージ。メンバーにとって、この日はどんな”第二の出発”になったのだろう。はっきりと言えるのは、サプライズで発表された次の目的地が決まったということ。そして、その目的地は終着駅ではなく通過駅であるということだ。
ワンホワとファンが、それぞれに情熱の灯火を絶やさずに歩んでいけば、きっとまた新しい目的地が見えてくるに違いない。2024年8月17日、この日に引いたスタートラインから、これからも終わりのない夢の旅路へ走り出してほしいと心から願っている。
【セットリスト】
01. SUMMER BEAT
02. Funky Night
03. アナタニ愛ヲ
04. Shining Road
05. Liberation-解放-/PUNKY RAD PINK
(MEERIN・MARIKA・LIYU)
06. 背景、少年よ/Hump Back(ARISUドラム演奏)
07. 番狂わせ/Hump Back(KANON)
08. ANIMA/ReoNa(UII)
09. 太陽と踊れ
10. LOVE2000
11. VANILLA
EN. Second Departure